大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)1942 判決

主 文

原判決を破毀する。

本件を東京高等裁判所に差戻す。

理 由

上告人提出の上告趣意書は末尾添付別紙記載のとおりである。之に対し当裁判所

の判断は次のとおりである。

判決言渡までの審理の経過から着て、被告人に執行猶予を言渡すことのできない

前科の存する疑あるに拘わらず、右疑問を一掃するに足るまでの審理を尽さずして、

執行猶予の言渡をした場合には、審理不尽の違法ありと為すべきことは、当裁判所

の判例とする所である(昭和二三年(れ)第九七八号、同年一一月一八日第一小法

廷判決参照)。而して原判決は被告人に執行猶予の言渡をしていることは所論のと

おりである。

然るに被告人は之より先き第一審裁判所において、同裁判所の判決言渡当日であ

る、昭和二三年二月二五日の保釈決定に依り、その住居を東京都文京区a町b番地

A方に制限せられ、その翌二六日保釈釈放せられたものであることは記録(記録五

三丁、五六丁)に依り明瞭であり、且つその後保釈の取消及び住居変更の許可せら

れた形跡のないことも記録上明らかである。然るに被告人に対する昭和二三年一〇

月二七日の、原審第二回公判期日の召喚状は、東京拘置所長宛送達せられているこ

とは、記録編綴の同送達報告書(記録六四丁)に依り明瞭であるのである。然らば

原審にして右の点に注意したりとせば、当時被告人は本件以外の犯罪被疑に因り拘

禁せられ、その訴訟進行中の者であるか、或はその事件の判決確定し既に受刑中の

者であるかも知れないとの疑問の生ずることは当然の筋合である。

然るに原審は事茲に及ばず、右第二回公判期日において被告人の「前科はありま

せん」との供述を信じ、同年一一月一〇日本件執行猶予を附した判決を言渡してい

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るのであつて、原判決は正に此点に際する審理不尽の違法あり。論旨は結局理由が

ある。而して若し被告人に執行猶予の妨碍たるべき前科ありとせば、本件事実の確

定と判決に影響を及ぼすことは明らかである。而して記録を閲するに、右判決言渡

当日附被告人に対する検事聴取書(記録七七丁以下)における被告人の陳述、並び

に同月一三日附東京地方検察庁の前科調書(記録八〇丁)に依れば、被告人は前示

保釈中に犯した他の犯罪に依り、懲役刑に処せられ、右原審第二回公判期日当時は

現にその受刑中の者である如く窺われるのである。

仍つて刑訴施行法第二条及び旧刑訴法第四四七条第四四八条の二に従い、主文の

とおり判決する。

此判決は全裁判官一致の意見である。

検察官 橋本乾三関与

昭和二四年五月二八日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官藤田八郎は、出張中につき署名捺印することができない。

裁判長裁判官 霜 山 精 一

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